人間国宝の井上萬二さんご本人が作った青白磁の骨董品をお買い取りいたしましたので、井上さんと作品についてご紹介いたします。
今回買い取りの作品は、白磁牡丹彫文の菓子鉢で、共箱と共布と栞がついています。井上萬二さんご本人が作ったという証明にもなる栞がついているので、人間国宝が手掛けた作品だという事が一目瞭然です。
井上萬二さんは、佐賀県有田町出身の陶芸家です。
有田町といえば有田焼で有名な陶器の町ですが、井上さんはまだ十代の頃から酒井田柿右衛門や奥川忠右衛門といった巨匠に師事し、白磁制作の技術を学びました。
その後、井上さんはペンシルベニア州立大学に有田焼の講師として招致されて渡米したり、ドイツで個展を開いたりして、世界を股にかけて有田焼の魅力を発信し続けてきました。
1995年に人間国宝に認定され、重要無形文化財「白磁」保持者となります。
そんな井上さんは白磁のことを「形そのものが文様」だと言い、一切の加飾に頼らずに白磁そのものの持つ造形美を体現しようと日々研究と鍛錬に余念がありません。
やわらかで滑らかな造形だけで、凛とした美しさや端正さ、そして曲線美が奏でる温かさを表現するという事を目指す井上さんの目標は高く、平凡な形こそ難しい白磁の世界で技術を磨き続け、そして白磁の魅力を発信し続けています。
今回お買い取りの菓子鉢は、まさに井上さんの白磁への想いや信念が込められた作品と言えるもので、真っ白で他に色の無い菓子鉢の底の部分には牡丹の文様が浮き彫りのように刻まれており、光の当たり方で美しい牡丹の姿が浮かび上がってくるようなデザインとなっています。
牡丹の文様も美しいのですが、なんといっても菓子鉢そのもののフォルムがとても美しいのが特徴のひとつでもあり、鉢の縁部分の曲線がとても繊細でなめらかに作られています。
なめらかさと、そしてたおやかさ、艶やかさなど、この白磁の魅力を表す言葉はいくらでも思い浮かびます。
普段はインテリアとして飾っておくだけでも美しさを演出できて、家の中に特別な空間を作り出す事ができます。そしてお客様がいらした時などには、実際に菓子鉢としてちょっと良いお菓子を入れてお出しすれば「素敵な器ですね」というところから会話が広がっていくことでしょう。
人間国宝、井上萬二さん自ら手掛けた白磁の素晴らしさを感じられる毎日に幸せを感じてみてはいかがでしょうか。