人間国宝、加藤卓男氏は、代々続く陶芸家の一族に生まれました。
古代ペルシア陶器の独創的な造形や斬新な色合いに魅力を感じて、西アジアで長年に渡り発掘研究に従事し、滅び去った幻の名陶「ラスター彩」の復元を成功させました。
その後も、青釉、三彩、ペルシア色絵など、シルクロードの異民族の文化と日本の文化を融合させ、斬新な陶芸活動を進めました。
そんな加藤卓男氏は、宮内庁正倉院から正倉院三彩の復元制作を委嘱されます。正倉院といえば、そう、シルクロードです。シルクロードを渡り、海を越え日本へやってきた数々の伝来品が保管されていた正倉院の三彩の復元に、加藤氏は9年もの歳月を費やし研究し、ついに復元に成功します。そして、その功績から平成7年に重要無形文化財保持者、つまり人間国宝に認定されました。
「ラスター彩陶」や「三彩の道」、「やきもののシルクロード」や「ラスター彩遊記・砂漠が誘う」など、数多くの著書も残しており、シルクロードと日本の陶芸の架け橋となった人物でもあります。
そんな加藤卓男氏が復元した正倉院の三彩を用いた渦巻文の花瓶は、鮮やかな緑と黄色が目を引き、花瓶というよりも、それだけで芸術品として完成しているような堂々たる出で立ちです。
もちろん、花を入れても美しく、花の魅力を決してそこなわないように作られています。
シンプルな曲線美と華美にならない装飾、そしてまるで茎や葉を連想させるような緑と黄色の色合いは、どんな花を入れてもその花の美しさを際立たせ、豪華に魅せるような役を果たします。
花が無ければ無いで、花瓶だけで十分魅力的な陶器であり、床の間や玄関口などに置いておけば、思わず見入ってしまうような骨董品です。
「渦巻文」という名の通り、渦巻き状の模様が入っており、これが五月蠅くないのに個性的という絶妙なバランスで見る者の目を楽しませてくれます。
和室との相性はもちろん良いですが、洋室に置いておいても全く違和感なく馴染みます。
インパクトがありながら、邪魔な印象を与えずにどんな部屋にもスッと馴染む不思議な花瓶を、ぜひお部屋においてみてはいかがでしょうか。
おもてなしの席にもピッタリで、この花瓶を置くだけで味気ない部屋も一気に個性と華やかさが演出できます。
季節の花を活ければ、ますます楽しみが増える、そんな魅力的な花瓶です。