伊藤美月作 唐草花紋急須 萬古焼 をお買取り致しました

伊藤美月の唐草花紋急須をお買取りしましたので、伊藤美月について、また萬古焼について、少しばかり豆知識をご紹介いたします。

 

萬古焼とは、日本の伝統的な陶磁器、焼き物のひとつで、現代では三重県の四日市萬古焼が有名です。

その誕生は江戸時代までさかのぼり、沼波弄山(ぬなみろうざん)という人物が現在の三重県朝日町小向(おぶけ)に窯を開いたことから始まります。自分の作品がいつまでも残り続けるように、という願いを込めて弄山が「萬古不易」という印を押したことから、この窯で作られた焼き物は萬古焼と呼ばれるようになります。

 

弄山の代から脈々と受け継がれた萬古焼は、この辺りの地域で人気を博すようになります。そんな折、小向の隣町であった四日市の村役人だった山中忠左衛門という人物が、その人気に着目して村おこしのために導入したことが、四日市萬古焼の誕生とされています。

当時、四日市の村は度重なる水害に襲われ、年貢も支払えないほどに困窮しており、この窮地を救ったのが萬古焼だったのです。

 

その後も、さまざまな職人にその技術が受け継がれていき、日本有数の焼き物として名を馳せるようになった萬古焼。

その第一人者として、四日市萬古焼無形文化財保持者に認定されたのが伊藤美月でした。

 

伊藤美月は陶芸を家業とする家に生を受け、18歳のころからその世界に入って技を磨いてきました。彼が生み出す陶器は数々の展覧会で入賞し、四日市萬古焼の知名度を上げることにも貢献しました。急須や花器、香炉など幅広い創作活動を続ける伊藤の信念は「自分は職人であり作家ではない」ということだそうです。

 

これは、例えば茶器(急須)であれば、急須は見せるものではなく、使ってその美を感じるものであるという考えで、あくまでも「使うため」に作っているという信念となります。

今回お買取りした急須もまるで芸術作品のように美しいものですが、ただ飾っておいて使わないというのは、伊藤の本意ではないということです。

 

唐草花紋が浮き彫りになっている急須は、どの角度から見ても非常に美しく、その曲線美と重厚感、凛と佇む姿は、息を飲むほどですが、飾っておいてひとつの角度から眺めるのではなく、茶道具として、お茶を淹れる一連の所作の中でその美しさを楽しむのが正しいということになるのでしょう。

 

お着物と合わせたり、屏風や掛け軸と合わせたりして、楽しみたい、そんな急須です。

 

カインドベアでは、日本のあらゆる名窯の陶器や食器などを、積極的にお買取りしております。伝統的で高価なものだとは分かるけれど使わずにしまい込んでいるというものがございましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。